創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」④
조회 수 9683 2004.12.23 01:45:44.<.
(過去ログ・愛様のスライドより・・・)
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創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」④
セナが歌手としてデビューしてから、初めて施設慰問をする。
それも、セナとヨンスが育った「天使の家」・・・
今日は、朝早くからセナのスタッフと混じって、ヨンスとミンチョルも同行することにした。
「お姉ちゃん、体は大丈夫? 疲れたら、すぐに言ってよ。休憩をとるからね・・・。」
ソンジェが運転するワンボックスカーには、ナレとセナ、ミンチョルとヨンスが乗り込んだ。
あとは、後続に機材と衣装などを積んだ車が一台着いてきた。
ソウルから、2時間はかかる静かな田舎に、天使の家はある。
門に入ると、60人ぐらいの子供たちが待っていてくれた。
「門が新しくなってるね。」
セナが、身を乗り出してみんなに手を振りながら話す。
「園舎も、壁の色が新しくなっているわ・・・。」ヨンスも、懐かしそうに眺めた。
ヨンスが、幼少時代には園長であったハン・キョル先生は今では、引退されて理事をされていた。
すっかり、腰が曲がって頭髪もすっかり白くなってしまっていた。
「セナ・・! ヨンス・・・!」
ふたりがそばに来ると、車椅子から立ち上がり、懐かしそうに抱きしめていた。
「ハン園長・・・すっかりおばあちゃんになっちゃって・・・。」
セナは、涙をこぼしながらハン先生に抱きついていた。
「私の思ったとおりよ。 セナ、あなたはきっと、夢をかなえる子だと信じていたわ・・・。
施設を逃げ出したときも、セナならやっていけると信じていたのよ。」
「うん・・・・。ヨンスおねえちゃんのおかげだよ。
お姉ちゃんがいなかったら、私こんなになってはいなかったよ。」
「・・・ヨンス、本当にありがとうね。
あなたは、いつもセナのお世話で振り回されていたわね・・・。
いいお姉さんですよ・・・。
体の方は、もういいの?」
「もう、すっかり元気になりました。
ご心配おかけしました・・。」
ヨンスの後ろから、ミンチョルが挨拶をした。
「はじめまして。イ・ミンチョルです。」
「私の夫です・・。」
ハン先生は、ミンチョルの手をとり、額にこすれるほどにお辞儀をした。
「これはこれは、こんな遠いところまで、お越しくださってありがとうございます。
ヨンスが結婚したと、風の便りで聞きましたときには、どれほど感謝したかしれません。
この子は、もともと体が弱かったのに、施設の生活が困窮することをしって、自ら働きにでたのですよ。
働きながら、大学へ行って、節約している生活費の中から、年末には仕送りをしてくれていました。
苦労ばかりかけた子です。
どうか、幸せにしてください・・・・お願いします。 」
ハン先生の目からは、次々に涙があふれていた。
「今日は、私が元気になる歌を歌ってあげるからね。
さぁ、中に入ろう・・・。」
セナは、ハン先生を車いすに腰掛けさせると、車椅子を押しながら園内に入っていった。
60人ほどの子供たちも、笑い顔で園内に走っていった。
音響の機材が運ばれ、小さな集会室が、コンサート会場に変わった。
セナは、自分の曲とみんなも歌える童謡などを歌った。
プレゼントを渡し、サインをして、それからゲームをして遊んだ。
ヨンスとミンチョルは、その間に園内を案内してもらい、ハン先生と昔話をした。
「そうだわ・・・ヨンスにあわせてあげたい子がいたんだわ・・。」
ハン先生がそう言うと、そばにいた職員が一人の乳児を連れてきた。
まだ、生まれて一ヶ月もたたないくらいの男の子だった。
「まぁ・・・かわいい。」
そっと抱いた。すやすやと眠るその子は、天使の顔をしている。
「ヨンスは、小さいときから、赤ちゃんの面倒をみるのが上手でしたね。
ヨンスの手にかかると、どんなに泣いている子でも、ピタッと泣き止んだものです。」
赤ちゃんを抱いている姿が、しっくりしていて、まさしく母親の表情をしていた。
「こちらに、まだ、赤ちゃんがいますよ・・。」
職員につれられて、ベビールームへ入った。
その間、ミンチョルは園長室でお茶を飲みながら、ヨンスの生い立ちについて意外な話を聞いた。
「ヨンスの出生も、それは可哀想なものでした・・・。
忘れもしません・・・。
あの子を保護するために、引き取りにいったところは、北に近い集落でそこにすんでいる人たちは、
南北分断されて、引き裂かれた家族を待ちわびている人達が大勢すんでいる村でした。
母親の名は、ヨン・キョンファ・・・。
キョンファの父親が、北に住んでいると言うことでしたね。
キョンファも、とても体が弱く、仕事もできないほどに寝込むことが多く、そのときに入院していた先の病院で
ヨンスの父親と出会ったらしいです・・。
らしい、というのも、ヨンスの母親は、ヨンスを生むのと同時に息をひきとっています。
身よりもないキョンファでしたから、妊娠していることさえも周りに知られないように、家からは一歩もでることなく、
たったひとりでお産したようです。
発見されたときには、まだ、へその緒をつけていて、それでも母親は生まれてすぐのヨンスを、チマチョゴリで作ったきれいな
おくるみで包み、ヨンスのおなかには、キム・ヨンス、と血で書かれていました。
その名前が、ヨンスの父親の名なのか、それとも、この子に付けたかった名前なのかは誰もわかりません。
私はキョンファをしりませんが、きっと、心から愛した男性の子どもだったから、命をかけても生みたかったのでしょうね・・・。
敬虔なクリスチャンだったというキョンファは、どんなに病の苦しみにあっても、
常に微笑みを絶やすことなく、聖歌を歌っていたと言います。
ヨンスに似ていると思いませんか・・・?
私は、ヨンスが白血病で入院したという話を、セナから聞いたとき、あの子の母親のキョンファを思い出しました。
生んではいけない、おなかの子を産めば、自分の命がない、それを分かっていながら、
次に命を受け継がせるために、キョンファは、ヨンスに命をわたしたのだと思ったのです。
その命ですから、きっと、助かる・・・そう信じていました。 」
涙ながらに話されるハン先生の言葉に、ミンチョルも涙があふれるようだった。
「ヨンスは、とても子ども好きなのですが、赤ちゃんはまだなのですか?」
「は・・・それが、医者から妊娠してはいけないと、止められています・・・。
本人は知りませんが・・・。」
「それは、おつらいですね・・・・。あれほどに、子どもが大好きなのに・・・・。」
ハン先生も大きなため息しかでない・・・。
「ここにきます、赤ちゃんの大半は、親が子どもを拒否する人が多いです。
いまさっきの男の子は、シモンといいますが、あの子の父親は妊娠中から、母親に暴力を振るっておりました。
お産後には、あの子にまで危害を加えようとしたために、ここに保護されたのです。
父親の気持ちが変わらない限り、返すわけには行かないです。
方や、子どもが生めずにいるかと思いきや、捨てる親もいるのですから・・・・。」
ミンチョルは、ヨンスがいるベビールームへ行った。
まるで、わが子を愛しむ母親のように、ヨンスは、おくるみに包まれた小さな赤ちゃんをあやしていた。
・・・・・私の夢は、平凡だけれども、暖かい家庭を持って、愛する人の子どもを持つことです。
つまらない夢でしょう・・・・・・。
ヨンスが、結婚前に話してくれた夢・・・・。
叶えてあげたい・・・。
「あなた・・・。」
ヨンスに手招きされて、中へ入った。
「あなたも、抱いてみて・・・。」
ヨンスに言われるまま、ミンチョルは初めて、こんなに小さな赤ちゃんを抱いた。
「小さくて軽いけど、なんだか、肩がこりそうだね。」
「可愛いでしょう・・・?」
ふたりは、顔を見合わせて微笑んだ。
「未来の赤ちゃんのために、練習していて・・・。
私たちの子どもって、どんなでしょうね・・・。
あなたは、どっちがいい・・・?
私は、男の子かな? うん・・・でも、女の子も可愛いわね・・・。」
ヨンスの、なんともいえない幸せなひと時であるのだろう、夢の話をするときの、きらきらとひかる瞳がまぶしかった。
ミンチョルはつらさを隠すために、窓際に行き、寝ている赤ちゃんに「もうすぐ、外は白いふゆになるよ。風邪をひかないように・・・」と話しかけた。
そんな優しいまなざしのミンチョルが、また、好きになる場面だった。
クリスマスには、もう来ることができないが、プレゼントを送ることを約束したセナは、天使の家の子供たちに見送られて
施設を後にした。
見送る子供たちは、大きな声でクリスマス・ソングを歌ってくれた・・・・。
「・・・また、きたいな・・。」
涙ぐんで話すセナは、いつまでも天使の家の方向を見ていた。
「ええ・・・また、来ましょうね・・・。」
セナの手を握りしめるヨンスも、また、涙をこぼしていた。
ミンチョルにとって、天使の家に訪問したことは、ヨンスの幼少時代を垣間見たようで胸の奥の感動はいつまでも残った。
ヨンスの両親の恋愛・・・・
そして、母、キョンファのつらくも美しい生き方を思うと、ヨンスをそれ以上に幸せにしてあげなければと強く心に誓った。
帰りのハイウェイで、初雪を見た。
「今年のクリスマスは、きっと、雪だわ・・・。」
(過去ログ・愛様のスライドより・・・)
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創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」④
セナが歌手としてデビューしてから、初めて施設慰問をする。
それも、セナとヨンスが育った「天使の家」・・・
今日は、朝早くからセナのスタッフと混じって、ヨンスとミンチョルも同行することにした。
「お姉ちゃん、体は大丈夫? 疲れたら、すぐに言ってよ。休憩をとるからね・・・。」
ソンジェが運転するワンボックスカーには、ナレとセナ、ミンチョルとヨンスが乗り込んだ。
あとは、後続に機材と衣装などを積んだ車が一台着いてきた。
ソウルから、2時間はかかる静かな田舎に、天使の家はある。
門に入ると、60人ぐらいの子供たちが待っていてくれた。
「門が新しくなってるね。」
セナが、身を乗り出してみんなに手を振りながら話す。
「園舎も、壁の色が新しくなっているわ・・・。」ヨンスも、懐かしそうに眺めた。
ヨンスが、幼少時代には園長であったハン・キョル先生は今では、引退されて理事をされていた。
すっかり、腰が曲がって頭髪もすっかり白くなってしまっていた。
「セナ・・! ヨンス・・・!」
ふたりがそばに来ると、車椅子から立ち上がり、懐かしそうに抱きしめていた。
「ハン園長・・・すっかりおばあちゃんになっちゃって・・・。」
セナは、涙をこぼしながらハン先生に抱きついていた。
「私の思ったとおりよ。 セナ、あなたはきっと、夢をかなえる子だと信じていたわ・・・。
施設を逃げ出したときも、セナならやっていけると信じていたのよ。」
「うん・・・・。ヨンスおねえちゃんのおかげだよ。
お姉ちゃんがいなかったら、私こんなになってはいなかったよ。」
「・・・ヨンス、本当にありがとうね。
あなたは、いつもセナのお世話で振り回されていたわね・・・。
いいお姉さんですよ・・・。
体の方は、もういいの?」
「もう、すっかり元気になりました。
ご心配おかけしました・・。」
ヨンスの後ろから、ミンチョルが挨拶をした。
「はじめまして。イ・ミンチョルです。」
「私の夫です・・。」
ハン先生は、ミンチョルの手をとり、額にこすれるほどにお辞儀をした。
「これはこれは、こんな遠いところまで、お越しくださってありがとうございます。
ヨンスが結婚したと、風の便りで聞きましたときには、どれほど感謝したかしれません。
この子は、もともと体が弱かったのに、施設の生活が困窮することをしって、自ら働きにでたのですよ。
働きながら、大学へ行って、節約している生活費の中から、年末には仕送りをしてくれていました。
苦労ばかりかけた子です。
どうか、幸せにしてください・・・・お願いします。 」
ハン先生の目からは、次々に涙があふれていた。
「今日は、私が元気になる歌を歌ってあげるからね。
さぁ、中に入ろう・・・。」
セナは、ハン先生を車いすに腰掛けさせると、車椅子を押しながら園内に入っていった。
60人ほどの子供たちも、笑い顔で園内に走っていった。
音響の機材が運ばれ、小さな集会室が、コンサート会場に変わった。
セナは、自分の曲とみんなも歌える童謡などを歌った。
プレゼントを渡し、サインをして、それからゲームをして遊んだ。
ヨンスとミンチョルは、その間に園内を案内してもらい、ハン先生と昔話をした。
「そうだわ・・・ヨンスにあわせてあげたい子がいたんだわ・・。」
ハン先生がそう言うと、そばにいた職員が一人の乳児を連れてきた。
まだ、生まれて一ヶ月もたたないくらいの男の子だった。
「まぁ・・・かわいい。」
そっと抱いた。すやすやと眠るその子は、天使の顔をしている。
「ヨンスは、小さいときから、赤ちゃんの面倒をみるのが上手でしたね。
ヨンスの手にかかると、どんなに泣いている子でも、ピタッと泣き止んだものです。」
赤ちゃんを抱いている姿が、しっくりしていて、まさしく母親の表情をしていた。
「こちらに、まだ、赤ちゃんがいますよ・・。」
職員につれられて、ベビールームへ入った。
その間、ミンチョルは園長室でお茶を飲みながら、ヨンスの生い立ちについて意外な話を聞いた。
「ヨンスの出生も、それは可哀想なものでした・・・。
忘れもしません・・・。
あの子を保護するために、引き取りにいったところは、北に近い集落でそこにすんでいる人たちは、
南北分断されて、引き裂かれた家族を待ちわびている人達が大勢すんでいる村でした。
母親の名は、ヨン・キョンファ・・・。
キョンファの父親が、北に住んでいると言うことでしたね。
キョンファも、とても体が弱く、仕事もできないほどに寝込むことが多く、そのときに入院していた先の病院で
ヨンスの父親と出会ったらしいです・・。
らしい、というのも、ヨンスの母親は、ヨンスを生むのと同時に息をひきとっています。
身よりもないキョンファでしたから、妊娠していることさえも周りに知られないように、家からは一歩もでることなく、
たったひとりでお産したようです。
発見されたときには、まだ、へその緒をつけていて、それでも母親は生まれてすぐのヨンスを、チマチョゴリで作ったきれいな
おくるみで包み、ヨンスのおなかには、キム・ヨンス、と血で書かれていました。
その名前が、ヨンスの父親の名なのか、それとも、この子に付けたかった名前なのかは誰もわかりません。
私はキョンファをしりませんが、きっと、心から愛した男性の子どもだったから、命をかけても生みたかったのでしょうね・・・。
敬虔なクリスチャンだったというキョンファは、どんなに病の苦しみにあっても、
常に微笑みを絶やすことなく、聖歌を歌っていたと言います。
ヨンスに似ていると思いませんか・・・?
私は、ヨンスが白血病で入院したという話を、セナから聞いたとき、あの子の母親のキョンファを思い出しました。
生んではいけない、おなかの子を産めば、自分の命がない、それを分かっていながら、
次に命を受け継がせるために、キョンファは、ヨンスに命をわたしたのだと思ったのです。
その命ですから、きっと、助かる・・・そう信じていました。 」
涙ながらに話されるハン先生の言葉に、ミンチョルも涙があふれるようだった。
「ヨンスは、とても子ども好きなのですが、赤ちゃんはまだなのですか?」
「は・・・それが、医者から妊娠してはいけないと、止められています・・・。
本人は知りませんが・・・。」
「それは、おつらいですね・・・・。あれほどに、子どもが大好きなのに・・・・。」
ハン先生も大きなため息しかでない・・・。
「ここにきます、赤ちゃんの大半は、親が子どもを拒否する人が多いです。
いまさっきの男の子は、シモンといいますが、あの子の父親は妊娠中から、母親に暴力を振るっておりました。
お産後には、あの子にまで危害を加えようとしたために、ここに保護されたのです。
父親の気持ちが変わらない限り、返すわけには行かないです。
方や、子どもが生めずにいるかと思いきや、捨てる親もいるのですから・・・・。」
ミンチョルは、ヨンスがいるベビールームへ行った。
まるで、わが子を愛しむ母親のように、ヨンスは、おくるみに包まれた小さな赤ちゃんをあやしていた。
・・・・・私の夢は、平凡だけれども、暖かい家庭を持って、愛する人の子どもを持つことです。
つまらない夢でしょう・・・・・・。
ヨンスが、結婚前に話してくれた夢・・・・。
叶えてあげたい・・・。
「あなた・・・。」
ヨンスに手招きされて、中へ入った。
「あなたも、抱いてみて・・・。」
ヨンスに言われるまま、ミンチョルは初めて、こんなに小さな赤ちゃんを抱いた。
「小さくて軽いけど、なんだか、肩がこりそうだね。」
「可愛いでしょう・・・?」
ふたりは、顔を見合わせて微笑んだ。
「未来の赤ちゃんのために、練習していて・・・。
私たちの子どもって、どんなでしょうね・・・。
あなたは、どっちがいい・・・?
私は、男の子かな? うん・・・でも、女の子も可愛いわね・・・。」
ヨンスの、なんともいえない幸せなひと時であるのだろう、夢の話をするときの、きらきらとひかる瞳がまぶしかった。
ミンチョルはつらさを隠すために、窓際に行き、寝ている赤ちゃんに「もうすぐ、外は白いふゆになるよ。風邪をひかないように・・・」と話しかけた。
そんな優しいまなざしのミンチョルが、また、好きになる場面だった。
クリスマスには、もう来ることができないが、プレゼントを送ることを約束したセナは、天使の家の子供たちに見送られて
施設を後にした。
見送る子供たちは、大きな声でクリスマス・ソングを歌ってくれた・・・・。
「・・・また、きたいな・・。」
涙ぐんで話すセナは、いつまでも天使の家の方向を見ていた。
「ええ・・・また、来ましょうね・・・。」
セナの手を握りしめるヨンスも、また、涙をこぼしていた。
ミンチョルにとって、天使の家に訪問したことは、ヨンスの幼少時代を垣間見たようで胸の奥の感動はいつまでも残った。
ヨンスの両親の恋愛・・・・
そして、母、キョンファのつらくも美しい生き方を思うと、ヨンスをそれ以上に幸せにしてあげなければと強く心に誓った。
帰りのハイウェイで、初雪を見た。
「今年のクリスマスは、きっと、雪だわ・・・。」