ヨンスの健気な生き方は、誰の心にも美しく残ります・・・・・。

それは、ヨンスの子どもにまでも・・・・





         創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」24

ナレとキョスクの結婚式の当日、披露宴パーティの中で、キョスクはうれしそうに、父親になることを宣言した。
また、その日、イ・ソンジェがキム・セナとの婚約を発表した。
結婚はまだまだ先になるであろうが、ふたりの決意がやっと固まったのだろう。
その日のトップニュースには、今やトップスターのテクノアーティスト・セナと音楽プロデューサーとの永く深い恋愛の末、婚約をした、というトピックスが流れた。
「はやく、結婚したら?」というヨンスの質問に、
「スターは、そう簡単に結婚できないの。
 これでファンが減ることもあるし、まだ、やりたいことがたくさんあるの。
 日本や中国だけではだめなの。
 ニューヨークにも進出して、もっともっと、世界中にセナの名を轟かせるの!」
小さい頃にセナが思い描いていた夢が、現実のものとなったのだ。

順調に育ってきた愛娘・ミヒャンは、一歳の誕生をまえには歩き出し、言葉を覚えだしたら、大人の口真似を上手にできるようになった。
周りのすべてが大人ばかりの社会で育ったためか、どこか、子供らしくないようなところもあった。
それでも、一歳の誕生日を迎えても、ヨンスの母乳がなければ眠ることのできない可愛いミヒャンである。
ミヒャンの誕生日がすぎて2ヶ月、ナレが男の子を出産した。
予定より、10日も長く胎内にいたその子は、丸々と太った健康な子供で、名前をミンスクとつけられた。
初めてミンスクを見たミヒャンは、ヨンスの腕の中で甘えるミンスクに初めて嫉妬した。
その後、ミンスクが家に遊びに来るたびに、ミヒャンは母親がとられそうで、母の膝から降りようとしなかった。
ナレにたまに仕事が入り、ミンスクをヨンスが預かる日は、ミヒャンにとって、たいへんな一日であった。
ハイハイをしながら、ミヒャンの後ろを着いてくるミンスクが気になってしょうがなく、部屋に閉じ込めてみたり、絵本で囲いを作って、そばにこられないようにしたり、小さいなりに厄介なこの赤ちゃんを、母と自分から遠ざけようと工夫した。
避けられているとも知らないミンスクは、それでも、うれしそうに笑いながら、ミヒャンの後ろを、ハイハイをしながら追い掛け回した。
そして、いつも最後に泣くのは、ミヒャンであった。
「ママー・・・・!
 ミンスクをあっちにつれていってよぉ~!!」
「まぁ・・・ミンスクはあなたの弟よ。
 可愛がってあげてちょうだい・・・。」
「いやだよぉ~~~!!」
この繰り返しの一日であった。
それでも、ミンスクが疲れて眠ると、ミヒャンはミンスクを撫でてあげたり、頬にキスをしたりする。

ミヒャンが3歳になると、ずいぶん家の中で弄び過ぎていることが多かった。
表の庭園と同じくらいに、裏庭があり、そこのこぶしの木に登り、降りることができなくなったり、イ・ソンチュンが大事に育てている松の枝を折ってしまったり、裏庭の袖にある食品倉庫にミンスクと隠れていて、二人とも昼寝をしてしまい、家中が大騒ぎになったこともある。
ミヒャンのいたずらも度がすぎると、父のミンチョルからひどくお仕置きを受けるときもある。
一度は、それでも、言うことを聞かずにわがままを言い、地下の倉庫にとじこめられたこともある。
ミヒャンにとって、地下はなによりも怖い場所であり、初めてそこに閉じ込められたとき、埃にまみれたワインと、大きな額縁に入った、たくさんの絵画の絵がお化けに見えたことから、ミヒャンはそこをお化けの国と名づけて、ミンスクを脅したりしていた。
「ミヒャンを幼稚園にいれるほうがいいと思うが、君はどう思う?」
ミンチョルは、途中入園できる有名幼稚園をいくつかあたっていた。
「まだ、かわいそうだわ・・・
 来年からでも・・・・。」
「君が甘やかしすぎるから、だんだんわがままに育つんだよ。
 もう少し厳しくしつけないから、ソニもテジャも手に負えないでいるじゃないか。」
ヨンスは、ミヒャンの好奇心旺盛なところは、ひとつの個性ではないかと思って、あえてそれをいたずらとは思わないで、興味をもって探究心を働かせているのだと思うことにしていた。
ヨンスが静であり、セナが動であったように、ミヒャンもまた、動をもった子だと思った。
見て感じて、なんでも体験してみて、自分の中に学ぼうとしていた。
それを、ヨンスは見抜いていたから、特別悪いことと叱り付けることはしなかった。
しかし、それはミンチョルが言うように、甘やかしていることになるのかもしれない。
ミンチョルにとっては、たった一人の愛娘であると同時に、会社の後継者でもあるのだ。
それなりの知識と気品を身につけさせるためにも、有名校を受験させようと考えていたし、海外にも留学させようと考えていた。
「ミヒャン、君は家の中ばかりにいては退屈のようだから、幼稚園に入ってはどうかと思うんだよ。」
「幼稚園・・・?」
「そうだよ。幼稚園に行けば、ミヒャンと同じ年のお友達がたくさんいて、君も思いっきり遊べて楽しいはずだよ。」
「それでも、私がいないと、ミンスクがうちに来たときは、誰が遊んであげるの?
 それに、ママもきっと、私がいないとさびしいと思うわ。」
そばで、ミンチョルとミヒャンの会話を聞いているヨンスは、不安に耐えているミヒャンの目がかわいそうでならなかった。
「幼稚園が楽しいに決まっているじゃないか。
 家の中でいたずらすればしかられるだろうけど、幼稚園は、毎日遊んでいられるから、楽しいよ。」
「・・・だって、ママが・・・。」
すがるように、ヨンスの顔を見つめていた。
「ミヒャンが毎日、何をやらかすか、ママは心配でたまらないんだよ。
 そんなママのことも考えるんだ。」
ミヒャンは、その母から目をそらすと、下を向いたまま、ポタポタと涙をこぼした。
「・・・わかったわ・・・幼稚園に行くわ・・・。」
母が大好きだから、母の困る顔を見るのが、ミヒャンにもつらかった。
「それじゃ、すぐに手続きをするから。
 来週からでも行くように・・・。」
ミンチョルが、ミヒャンの部屋をでると、ヨンスはわが子を抱きしめた。
「いやなら、行かなくてもいいのよ。
 ママが頼んであげるわ・・・。
 パパにお願いしてあげるから・・・。」
ミヒャンはとても勝気な子なのだ。
少々のことでは泣かないし、自分がまちがっていないことでは、自分から謝ることもしない。
しかし、母がこまっていると思うと、その言葉だけは受け入れるしかないのだ。母が大好きだから・・・。
「私、幼稚園に行くわ・・・。
 ママ一人になるけど、さびしがらないでね・・・。
 ミンスクがくるときは、ミヒャンも幼稚園お休みして、面倒見てあげるからね。」
そういう優しい言葉が素直に言える、まっすぐに育ったことが、ヨンスにはうれしかった。
ヨンスが、ミンチョルに遠慮しながら生きているように、ミヒャンもまわりの大人たちの顔色を伺い、気を使いながら成長しているのが、ヨンスにはつらく、ミヒャンが不憫でならなかった。
「ママ、ミヒャンを嫌いにならないで・・・。
 ママの言うとおりにするから、パパの言うこともちゃんと聞くから、
 ママを困らせないようにするから・・・。」
ミヒャンは、不安でたまらなかった。
初めて家から出て、一人で幼稚園という社会に出て行くことが怖くてたまらなかった。
まさか、母が自分を嫌っているとは思わないが、まるで、母から突き放されるようで、
不安な気持ちで胸がつぶれそうだった。
初めて幼稚園に登園する日、ミヒャンは朝ご飯もあまりのどを通らず、笑うこともできないほどに緊張の中、ミンチョルの車に乗った。
ミッションスクールの幼稚部である聖ヨゼフ幼稚園は、車で20分ほどの閑静な学園都市の一部に建っていた。
幼稚園に慣れるまで、ミンチョルが送迎をすることにした。
それから、慣れてくれば、スクールバスをお願いしようと考えていた。
初めての幼稚園なのだから、ヨンスも一緒に行くつもりでいたが、その頃から、ヨンスの体の容態が悪くなり、時々貧血で寝込むようになった。
「ママ、行ってきます・・・。」
「一緒に行けなくて、ごめんなさいね・・・。
 大丈夫・・・・?」
「・・・うん・・・。」
ヨンスと目を合わせることなく、ミンチョルの車に乗り込んだ。
今週は、半日保育の体験週間にしてもらい、少しずつ慣らしていくことにした。
帰りの迎えは、お手伝いのソニが行ってくれた。
家に帰ってきたときは、ニコニコ顔のいつものミヒャンに戻っていた。
「ママ、ただいまー!
 幼稚園、とっても楽しかったわ!
 歌もダンスも上手だって、褒めていただいたの。
 ウンエというお友達ができたの。
 その子とずっと、ブランコをしていたのよ。
 ああ・・・楽しかったぁー!!」
朝までの不安がすっかり消えたようで、ヨンスもほっとした。
それでも、ミヒャンのことだ。
すぐに飽きてしまい、また、新しい刺激を探し出し、別の問題を起こすのかもしれない。
ヨンスは、不安ではあるが、自分にない性格のミヒャンのこれからが楽しみでもあった。

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最終回ではないです・・・・

ミヒャンの成長を少し書いてみました・・・・。
来週は、ヨンスと父の出会いです・・・。


댓글 '4'

mica

2005.10.25 23:47:33

maria chris様、こんばんは。
最終回ではなかったのですね。 嬉しいです!^^
ヨンスとは違って、お転婆なミヒャン・・・
でも、ヨンスはセナで慣れっこですものね。。
ヨンスの具合が悪いのが、気にかかります・・・
次回は、お父様に会うんですね。 どんな風になるんでしょう? 
これからも、楽しみにお待ち致しております♪


朴 胡桃

2005.10.27 10:39:30

ミヒャンは、お転婆で優しい子ですね。 セナもナレも活躍していて安心しました。
maria chris様これからどうなるのかしら。ドキドキです。

心愛

2005.10.27 16:42:39

maria chris様こんにちは。
1話から楽しく読ませてもらいました。
すごくすてきでした!!!!
24話で最終回と思っていて寂しい気持ちでしたが最終回じゃなくてほっとしました。
これからもがんばってください

mkmari

2005.10.28 10:18:16

maria chris様こんにちは。
今日登録しました。 チェ・ジウさんの世界に浸りきっています。
1話からずっと楽しみにして読ませて頂いていました。
これからも素敵なお話をよろしくお願いします。
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