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 創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」⑥

ミンチョルの経営するMIDASにふたたび、危機が訪れたのは、ある銀行の経営破たんが生じたころだった。
あと、1月もしない間に、融資を受けている額面の半分の返済を余儀なくされていた。
しかし、まるで、それを知っていたかのように、神の助けのような朗報が舞い込んできた。
それまでは、ソンジェの会社である、ミューズレコードからの仕事を演出・企画する請負の仕事を
多くしていたが、ある在米韓国人が、多額の出資を申しでてきたのだ。
故郷である、ソウルでがんばっている若い起業家に融資をする財閥家で、いままでも、
ユニセフやユネスコなどへの多額の寄付をしていたようだが、最近は将来性のある企業を発掘しては、
出資をしていた。
在米の財閥家の名を、ケイン・クラウディオというが、韓国名は伏せてあり、また、交渉に至っても
本人の代わりに、執事のチャン・ヒョヌクがすべてを仕切っていた。
「ケイン氏は、あなたの会社に多くの出資を希望されております。
 この先の将来性と起業家の熱意に信頼されて、
 100万ドルを贈りたいということです。」
「なぜ、私どものような、無名の会社をお選びくださったのでしょうか?」
「ビクトリーレコードのころから、注目されていました。
 一度は倒産してしまった会社をここまで復帰させ、率先して音楽業界に新風を起こし、
 今では、韓国にいや、世界に新しい音楽のタイフーンを起こそうとするほどの敏捷な凄腕を
お持ちであることを会長は見込んで、今回の話に至ったわけです。
ケイン会長は、すべてをご覧になってあなたをお選びになられたのです。
私生活でも、ご自分のためではなく、社員の生活をまず考えられ、
起業家のリーダーとしても申し分のないお人柄であることを、よくご存知です。
まずは、お渡しします資金で、アジアを制覇できるスターを数多く発掘するのです。
そして、韓国はもとより、日本、中国、台湾、東南アジアに名を轟かせ、
それから、世界を制覇していくのです。
ミンチョル社長のお考えの通りのプランでいいです。
すべてをあなたに託しますので、音楽業界のよきリーダーとして
今後のご活躍に期待します。
どうしても、あなたの手に負えないような壁に来たときには、
また、そのときによい方法を考えていきましょう。
さらなる発展を、ケイン会長は期待されています。」
「会長に、直にお会いして、お礼がいいたいのですが・・・。」
「会長は、どんな方ともお会いにはなられずに、これまで出資されてきました。
 アメリカに滞在されておりますが、お住まいも明らかにはされていません。
 インターネットでお調べいただいた限りの情報しか、だせないのです。
 ご了承ください。」
またとないチャンスだった。
運命の神が、ミンチョルにひかりを注いでくれたのだ、と思うしかなかった。

ちょうど、その頃、ソウル美術大学に通うミンジにも、奨学金を受けて、フランスに留学できるという話が舞い込んできていた。
「お姉さん・・・!!
 私に、ヨン教授が奨学金を受けて、フランスに留学してはどうか、と話してくれたの。」
興奮しながら話すミンジは、食事の支度をするヨンスの背中に抱きついてきた。
「これも、みんなお姉さんのおかげよ。
 美大を薦めてくれなかったら、私こんなチャンスにめぐりあえなかったと思うのよ。
 ヨン教授が言うには、これは、お姉さんにも出たお話だったそうね?」
「ええ・・・2年生の頃に、奨学金を受けてみないか、というお話を頂いたけど、
 ちょうど、その頃、休学してしまって単位が足りなかったのよ。
 私も、パリに留学する夢があったのよ。
 それを、ミンジが叶えてくれるのね・・・。
 うれしいわ・・・。
 お兄さんもきっと、大喜びするわね・・?」
「お姉さんも、復学して、もう一度、絵の勉強しない?
 ヨン教授も、おっしゃっていたわ。
 お姉さんほどの才能があるのに、絵を描かないなんて、もったいないって。」
「私はいいの。ミンジの夢がかなえば、私の夢も叶ったようなものよ。」
ミンジは、テーブルに書類を広げた。
「ケイン奨学金制度・・・っていうのね。」
「ええ、私のときも、ケイン奨学金だったわ。
 アメリカの有名な財閥家らしいわよ。
 画廊をいろんな国で経営されていて、家族がいらっしゃらない分、優秀な美大生を育てて
 たくさんの絵を世に送り出している方らしいわ。」

偶然なのだろうか・・・。
ミンチョルは、ケイン・クラウディオについて調べていた。
1980年ごろより、韓国にある施設や病院などに、多くの基金を送っていた。
その中に、ヨンスの出身である「天使の家」の名があり、ソウル美術大学にはケイン奨学制度が設置されたことなどが記されていた。
骨髄バンクを推進する協会にも名前があり、今回の若い起業家として選ばれたイ・ミンチョルという名も、ヨンスにかかわりがあり、これはすべてが偶然なのか、不思議でならなかった。
帰ってくるなり、ミンチョルはヨンスにたずねた。
「ケイン・クラウディオという人を知っている?」
「ええ。私が美大に行っていた頃に、ケイン奨学金制度といって、優秀な学生を海外に留学させるという
 制度を作られた方だわ・・・。
 今年は、ミンジにも声がかかったそうよ。
 でも、どうして、あなたはもう知っていたの?」
「僕の会社に、多額の出資をしてくれるというんだよ。
 ケイン氏が、バックアップしている企業は、それは世界に名をとどろかせるほどの有名企業だよ。
 それに、加えてくれるというんだよ。
 夢みたいな話だろう。」
「それは、すごいわ。
 あなたの実力が認められたのね。
 ビクトリーのころのあなたをご存知なのね、きっと。」
「なんだか、君のおかげのような気がするんだよ。
 君がいてくれるから・・・。」
「いいえ、あなたの仕事に対する真剣さが認められたのよ。」

しばらく、家の中が暗かった・・・。
あの日、シモンが死んでいったという訃報を聞いてから、ヨンスはしばらく泣いていたし、ミンチョルも
つらい日々を送っていた。
そんな中に飛び込んできた、良い報せだった。
少しでも、会社が発展していけば、おのずと苦しい経済状況も良くなるだろう。
今すぐは無理にしても、あと数年もすれば、今より大きな家に住めるかもしれない。
少しでも、ヨンスに服を買ってあげたり、おいしい食事に連れて行って上げられるかもしれない。
そのことを思うだけでも、ミンチョルの仕事に対する思いは、これまで以上に大きな意気込みを感じられた。
しかし、ヨンスは少しの寂しさを感じていた。
「ミンジがいなくなると、とても寂しいわ・・・。」
「お姉さん、私が留学するのは、夏よ。2年もすれば、帰ってくるわ。」
「ええ、そうだけど、2年は長いわ・・・。」
いつもそうするように、ミンジの髪を優しくなでながら話した。
「いつも、私を慰めてくれていたのに、今度、お兄さんと喧嘩したときは、誰にはなせばいいの?」
もう今では、セナは、それは超多忙の人気歌手となり、日本の年末の紅白歌合戦に出たのを皮切りに、
日本でも多くのファンが彼女のコンサートにくるようになり、次々にヒット曲を出していた。
そんなセナが、ヨンスに会いに来るのは、クリスマスくらいだろう。
「お姉さん、それまで、たくさん話しとこうよ。
 それに、留学したら、電話すればいいのよ。
 お兄さんが、またお姉さんのことを泣かしたら、私が怒ってあげるから・・。」
それを察したミンチョルは、休みになると、ヨンスとミンジを、植物園に連れて行ったり、美術館に連れて行ったりと思い出をたくさん作った。
あと、2ヶ月もすれば、ミンジはパリに旅立っていくのだ。
時間があれば、ふたりで絵を描いていた。
「お姉さんの絵は、安らぎを感じるわね・・・。
 絵に深みがあるから、すっと吸い込まれるような感じがするの。
 まわりの雑念を忘れるような一瞬・・・・。」
ミンジには、とてもヨンスの絵を超えることなどできなかった。
ヨンスの書いた絵の中で、まるで、ピエタの聖母のような絵があった。
まだ、小さな赤ちゃんを抱いた母親の絵・・・しかし、どこか悲しそうな母親の顔は、今にも涙があふれそうであった。
それは、まさしくシモンを描いた絵だった。
「なんだか、涙がでてきそうね・・・。」
ヨンスのファイルから、その一枚の絵を見つけたミンジは、思わずそう感嘆した。
「・・・あげるわ。
 お兄さんに見つかると、また、怒られるもの・・・。」
「ありがとう・・・大事にするわ。・・」

大学が夏休みに入ると、ミンジはパリに留学していった。
ケイン奨学金で・・・。
それは、ヨンスの夢でもあった留学だった。

                                                                                      7話につづきます。
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次回は、少し悲しみの中に入りますが、すぐに、幸せなときを感じるでしょう・・・。

nalysさま、こんな物語を読んでくださってありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。
また、ご感想をください・・・。
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