創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」⑭




社長室で、書類の整理をあわただしくしていたところへ、弟のソンジェから電話があった。
「兄さん、どうしてこんなことができるの!?
 まさか、兄さんが、それも秘書と浮気をするなんて・・・!
 なんとか、言ってくれよ。
 昨日、セナから電話があったときは、半信半疑だったが、
 こうして、新聞に写真入りででると、隠すことはできないだろう。
 セナから聞いたけど、ヨンス姉さんは、死ぬほど苦しんでいると、泣いていたよ。
 セナは、離婚してほしいと言っている。
 ヨンスさんを引き取りたいって言っていたよ。
 どういうことだよ。
 兄さん!!」
「大きな声を出さないでくれ。
 お前は、あんな記事を真に受けているのか?
 このおれが、浮気をしたと?」
「じゃ、どうして違うと、抗議しないんですか!
 お姉さんのためにも、それに秘書の名誉のためにも、断固として訴えるべきだ。」
「おまえは、なにもわかっていない・・・。
 今、一番傷ついているのは、テジャだよ。
 責任をとって会社を辞めたいといったが、それだけは、取り消してもらったが、
 もう、その件については、口出ししないでほしい。
 ヨンスは、おれの気持ちを一番よくわかっているはずだ。
 このくらいの記事では、動じないよ。」
「姉さんは、今が一番大事なときなのに、
 兄さんのことで悩ませて、泣かせることはしないでくれ。
 仕事とプライベートは区別して考えないと、姉さんの体が持たないよ。」
「わかっている・・・。
 今夜、病院にいくつもりだ。
 明日からしばらく仕事を休んで、ヨンスのそばにいるよ。」

ミンチョルが、病院についたのは、日付が変わろうとしていた時間だった。
ヨンスは点滴をしながら眠っていて、ナレは、ミンチョルを待ちながらおきていた。
「社長・・・!」
「ヨンスは?」
「今日は、全然食事も取れずに、水分補給も上手くできていなくて、
 とうとう点滴することになったんです。
 それに、夕べも眠れなかったから、少し眠剤をいれてもらったんですよ。
 やっと、眠ったところです。
 ずっと、泣いていたんです・・・・。」
ミンチョルは、ヨンスのベッドの脇にいくと、点滴をしているヨンスの手を握り締めた。
「・・・すまない。ヨンス・・・。」
「社長、少しお話が・・・」
ナレは、ミンチョルと隣のリビングで話をした。
「なんの話かは、わかりますよね・・?」
「・・・君までも、僕を疑っているのか?」
「あたりまえですよ。
 あんな記事が世に出回ったのですから、
 ヨンスじゃなくても、傷つきますよ。」
「テジャを慰めるつもりで付き合っただけだ。
 一緒に酒をのんだが、それだけだ。
 あの記事の写真のように、ホテルには行ったが、そこで介抱していただけだ。
 それ以外に、何もない。」
きっぱりと話すミンチョルは、静かな口調ではあるが、真実を語る強い話し方だ。
「僕は、明日から一週間、休みをとったから、ヨンスのそばにいるよ。
 ナレさん、しばらく、ソウルにもどるといいよ。」
「ぜひ、そうしてください。
 ヨンスにとって、今一番のくすりは、ミンチョル社長だけなんですから・・。」
その日は、ナレはリビングのソファに休み、ミンチョルはずっと、ヨンスの手を握っていた。

こんなに、細くなって・・・おなかの子だって、きっと、心配で大きくなれないだろうに・・・。
すまない、悪かったよ、ヨンス。
心配ばかりかけて・・・。

朝、ヨンスが目を覚ますと、ナレがやさしく微笑みながら、頬を撫でてくれた。
「おはよう・・・気分はどう・・・?」
「・・・おはよう・・たくさん、眠れて、今は気持ちいいわ・・・。
 夢を見たの・・・あの人が、そばにいたの・・・。
 私の手をとってくれて、優しい声で、話しかけてくれたの・・・。
 今も、唇に、あの人のキスのあとを感じるの・・・。
 夢でも、会えたから・・・私、嬉しい・・・。
 本当に会えなくても、・・・私、・・眠れば、夢で会えるって事に、
 気づいたの・・・。
 ナレ・・・今日は、笑っていられそうな気がするわ・・・。」
力なく話す声ではあるが、微笑みながら話す表情は、本当に幸せそうな顔をしていた。
「ヨンス・・・じつは、あなたの愛するご主人が、来ているのよ。
 夕べ遅かったから、起こさなかったの。
 今は、お医者様と話しているわ。
 すぐに、来るわよ・・。」
ヨンスは、ぱっと明るい顔になると、重い体を起こした。
「まだ、起きるのは無理よ。寝てなさい。
 すぐに、来るわよ。」
「私が、こんな格好していたら、あの人心配するわ・・・。
 起きないと・・。」
髪の乱れを気にしながら、ベッドから出ようとする。
「無理して倒れたら、余計に心配かけるだけじゃない・・。」
そう言ってもヨンスはおきだすと、洗面所に行き、身だしなみを整えだした。
「朝ごはんは、食べたのかしら・・・?
 今日も、これから、お仕事なのかしら・・・?」
ヨンスは、小さなキッチンに入ると、冷蔵庫の中を見ていた。
「ヨンス、私が仕度するから、座っていてよ。」
そのとき、ドアが開いて、ミンチョルが入ってきた。
「ヨンス。」
「あなた・・・!」
ミンチョルは、ヨンスを強く抱きしめた。
「なかなか、来ることができずにごめん。」
「・・・会いたかったわ・・・。」
「なんだか、小さくなったように感じるけど・・・。」
「いいえ、そんなことないわ。
 おなかも少し、大きくなってきたでしょう。
 赤ちゃんらしくなってきたのよ。
 エコーで撮ってもらったビデオがあるの。
 見ますか?」
ヨンスは、一生懸命に明るく振舞った。
少しでも黙ってしまうと、泣いてしまう。
でも、夫の前では泣かないと決めたのだ。
夫には、悲しい思いはさせないと・・・。

「ヨンス、私はしばらく、ソウルに帰るわ・・・。
 愛する旦那さまがいてくれるから、大丈夫よね?
 社長が戻る前には、来るようにするから、心配しないで・・・。」
「ナレ、ありがとう・・。
 あなたがいてくれなかったら、私、どうなっていたかな・・・?」
「今日から、一週間もずっと、四六時中一緒にいたら、わずらわしくって喧嘩しちゃうんじゃないの?」
「それも、いいわね・・・。」
ナレとヨンスは笑いながら、抱き合った。
「元気になって・・・。」
ナレは、後ろ髪引かれる思いで帰って行った。

ヨンスとミンチョルは、お昼ご飯をサンルームになっているテラスで摂ると、コーヒーを飲みながらくつろいだ。
まるで、ホテルのような病室では、部屋まで食事をはこんでもらうこともできるが、一階
のレストランで食事することもできた。
裾の長いスカートの腹部がほんの少し膨らんでいる姿は、やはり妊婦らしい。
しかし、あまり子供のことを話題にしようとしないヨンスは、そんなおなかを隠そうとし
た。
「もう、動くの?」
「ええ・・・時々・・・。」
「どっちだろうね・・・。
 君は、女の子がほしい・・?」
「あなたは?」
「そうだね。君によく似た、女の子・・・。」
「・・・病弱な子だったら、いやだわ・・・。」
なぜか、話題が途切れてしまう。
「もう、絵は描かないの?
 あんなに、赤ちゃんの絵をたくさん描いていたのに。」
ヨンスは、少し笑っただけで、その場をしのいだ。
もう、絵は描けなかった。
あの時、ミンチョルから、赤ちゃんの絵を破かれたときから、ヨンスは絵を描くのをやめていた。
「外を、歩きませんか?」
「外は、寒いよ。」
「それでも、歩きたいの・・。」
ミンチョルと二人で歩きたかった。
そこで見る風景を、絵でも描くように覚えておきたかった。
幸せが、ずっと続くように・・・。
握り合う手が少しずつ、暖かくなってきた。
「ミンジが、6月のお産の頃には、帰って来るらしいよ。
 病院で付き添ってあげるって、張り切っていたよ。」
「まぁ、ミンジが?うれしいわ。
 大学は、どうかしら・・・。」
「それは、楽しんでいるようだよ。
 クリスマスのころ、フィレンツェに旅行したと言っていたよ。
 修復の勉強をしたらしい。
 画家になるのも、たいへんだな・・。」
「・・・うらやましいわ・・・。
 私には、できなかったことだもの、いろんなことを勉強して、たくさん絵を書いてほしいわ。」
美術大学に通っていたときに、最優秀学生賞をもらい、国の奨学金でフランスに留学する
チャンスを射止めた。
しかし、ちょうどその頃、セナを捜すために大学を休学して、ビクトリーレコードにアル
バイト生として入った。
そこで、ミンチョルと運命的な出会いをしたのだ。
あのまま、奨学金を受けて、素直に留学していたら、今の自分はなかったのではないか・・・。
池のほとりを歩くと、凍っていた氷が少しずつ溶け出していた。
2月・・・まだまだ、冬は深いだろうが、自然は確実に春を迎える準備をしていた。
「家を買おうと思っているんだよ。
 マンションでもいいと思ったんだが、子育てをするには、庭付きの大きな家がいいだろう。」
「私は、今のアパートで十分ですよ。」
「父さんも、広い家にすみたいようだから、この際、引っ越そうと思っている。
 新村あたりに、探そうと思っているよ。
 君が退院するときには、新しい家に住めるようにするからね。」

ミンチョルがスオンの病院にいる間、ソウルのMIDASには、ケイン・グループのチャン・ヒョヌク秘書が時々顔を出していた。
ミンチョルに頼まれたわけではないが、会社に何かあってはいけないと、チャン秘書が社内の管理をかってでたのだ。
ケイン・グループのケイン・クラウディオ会長が、久しぶりに韓国を訪れたのは、社内にはもちろん、マスコミにも極秘で帰韓していた。
ヨンスの病気見舞いのためである。
チャン理事が運転する車は、公園の路地に入った。
「あの方が、ヨンスさまです。
 ほんの少し、おなかが目立ち始めましたが、普通よりずっと小さいようです。
 ヨンスさま自身も、あまり丈夫ではありませんし、
 おなかのお子様も、大きくなりきれないのでしょう。
 これからは、食事療法で改善されていけばいいのですが・・・。」
「・・・色が白い・・・。
 それに、長い黒髪だ・・・。」
亡くなったヨンスの母親・キョンファにそっくりだ。
病気になり、ますます似てくる・・・。
「とても、高い身長で、透き通るような白い肌をされています。
 髪はいつも長くされていまして、時々ひとつに束ねておられます。」
「前に見たときは、もっとふくよかで、健康的だったが・・・。
 ピザ屋でアルバイトをしていた頃だ。」
「大学を休学されるころでしたね。
 その後、ミンチョル氏と出会っておられます。」
「あれほどに、やつれて・・・。
 本当に、無事に子供は産めるんだろうね?」
「アーサー医師に、お会いになられますか?」
「いや・・・。君が、聞いておいてくれ。
 私は、やはり、ヨンスの前には姿を表すことはできない。
 どうか、ヨンスのことを、ずっと見守ってあげてほしい。
 ミンチョル君に、この後も何かあったときは、すぐに助けてほしい・・・。
 私のかわりに・・・。」
名乗り出ることのできない、父の熱く切ない心情だった。

散歩から帰ってくると、部屋の前に花かごが置かれていた。
「誰からかしら・・?」
まるで、春を思わせるような、色とりどりのチューリップが花かごいっぱいに入っていた。
メッセージカードには、“ケイン・クラウディオ”と書かれていた。
「これは、ケイン会長からだ。」
ミンチョルはあわてて、ケイン会長の秘書に電話をした。
「会長から、奥様へという伝言でした。
 会社の方は大丈夫ですから、奥様のおそばに着いてあげてください。」
早速、リビングのサイドテーブルに飾った。
「いっぺんに春が来たみたいだわ・・・。」
ココアを入れながら、明るく笑うヨンスも花に負けず、美しかった。
ソファにすわり、ココアを飲みながら、ミンチョルは話しを切り出した。
「ヨンス・・・・聞かないの?
 浮気のこと・・・。」
「・・・あなたを、信じています。
 あなたのことを、一番わかっているのは、私だけですから・・・。」
ミンチョルは、やわらかいヨンスの手を握り締めると、ゆっくり話し出した。
「テジャは、アメリカに恋人がいたらしい。
 しかし、最近別れたんだよ。
 彼を置いて、自分だけで韓国に帰国したことが直接の原因ではなかったようだが、
 会わない時間が長くなりすぎて、お互いに距離ができすぎたのだろう。
 彼には、新しい恋人ができ、その子と婚約するといってきたらしい。
 テジャは、一度やけをおこして、酔いつぶれてしまって、僕の携帯に電話をしてきた。
 彼女を介抱するために、近くのホテルに入ってしまった。
 それを、スクープされたようだ。
 うかつだった。君を苦しめることになって。
 それに、テジャにも、申し訳ないことをした。」
「私は、大丈夫ですから・・・。
 テジャさんは、どうしていますか?」
「責任を感じて、しばらく自粛するといって、アメリカに帰ったよ。
 それでも、来月には、帰ってくるように言っていたから、
 元気になって戻ってくるだろう。」
「それなら、よかったわ。
 私も、テジャさんに会いたいわ。
 テジャさんには、私の持っていないものをたくさん持っている人だわ。
 子供が生まれたら、家庭教師になってもらいましょうよ。
 いろんな国の言葉が話せるなんて、素敵じゃない。」
「そうだね。子供の教育係りになってもらおう。」
夕飯までの間、ヨンスはしばらく昼寝をすることにした。
「一緒に、寝てあげようか?」
「ええ、そうして・・・。
 目が覚めたら、あなたがいなくなっていて、夢だったなんて、思いたくないもの。」
ヨンスのベッドに入ると、ミンチョルの腕枕に安心したのか、すぐに眠りについた。
しばらく、ヨンスの寝顔を見ていた。
ベッドのサイドテーブルに診療記録簿があった。
それには、毎日の食事記録などが記されていた。
-――朝、レモンティ、ビタミン剤。
  昼、野菜ジュース150cc、グレープフルーツ4分の1、
  間食、ヨーグルト2口、イチゴ1粒。
  夜、サンドイッチ一切れ、アイスクリーム(バニラ)、ビタミン剤、鉄剤。―--
なんと、毎日がこの調子の食事だった。
数日置きに、点滴が施され、それで栄養を補充しているようだ。
記録には、ミンチョルからの電話があった日も記されていた。
そして、「・・・会いたい・・・」という文字を見つけると、胸の奥が締め付けられるようだった。

                  




댓글 '4'

朴 胡桃

2005.05.03 07:57:28

また読み返してしまいました。
コンサートでジウ姫を見たら、泣いてしまいそうです。

miharu

2005.05.03 13:19:15

待っておりました。ミンチョルのことをあまりにも深く愛しすぎてさまざまに揺れ動くヨンスの姿が目に浮かびます。もうすぐコンサートで、二人の姿をみることができますね。

maria chris

2005.05.03 21:08:14

毎回、読んでくださってありがとうございます。
ずいぶん遅れてしまったのには、父親のことでいろいろ考えることがあってのことです。
なぜ、名乗り出ることができないのでしょうか・・・?
自分で作っておきながら、なぜ?と自問しております。

今週は、「美しき日々・ファイナルコンサート」ですね。
私は、6日に見に行きます。
また、ヨンスとミンチョルに会えますね・・・。

今度は、もう少し早くUPできると思いますので、
また、読んでご感想をお願いしますね・・・・。

TiYan

2005.05.04 19:07:12

maria様 有り難うございます。待っていました。
ゆううつな日々でした・・・
少し 気持ちが 楽に成りましたが ミンチヨルに少し 怒っています・・
何事にも 的確に 判断し決断するミンチヨルが 秘書に(事情がどうあれ)??
此からの 展開に 秘書が深く関わって ヨンスが 涙をながすのか?
今までに ミンチヨルの側に 女性の 存在は ヨンスだけだったので余計に心配しています・・・
次回作も 待っています。 実のところ 毎日 仕事から帰るとここに来て (創作文 それから~)載っているかチエックしている私です。
今回は 参加出来ず 残念で しかたありません
ヨンスとミンチヨルに会いたい・・・ 
行かれる方々は 楽しんできて下さいね。
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