新しい年を迎え、皆様のご健勝をお祈りいたします。

年のはじめに、運営者さまより先輩の皆様より早くご挨拶に伺い、
物語を掲載いたします不躾をお許しください。

STARJIWOOの皆様にとりましても、本年がよりいっそう良い年でありますように・・・。



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             創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」⑤

「天使の家」に慰問に行った日から、ヨンスは何かの希望を感じていた。
・・・子どもがほしい・・・ 
今までも、漠然と考えていたことだったのだが、あの日シモンを抱いたときから、
その夢を現実にしたいと、切に思った。
ヨンスの口から出る言葉が、いつも子どもに関することが多く、ミンチョルも気になりながらも、
なるべくうなずくだけで、聞き流すようにしていた。
いつかは、真実を話すときが来るだろう・・・ヨンスには、妊娠には耐えられないということ。

ある日、ミンジとデパートに買い物に出た。
新しい年を迎えるための準備の買い物だった。
「かわいい・・・。」
ヨンスが立ち止まったところは、ベビー服コーナーだった。
ひとつひとつを手にとりながら、愛くるしいほどのかわいいベビードレスを見つめるヨンスの微笑む表情はそれは、美しかった。
「そろそろ、買わなきゃね・・。
 お兄さんとお姉さんの赤ちゃんって、どんなかな・・・?」
ヨンスも、そのドレスを着ているわが子を想像していた。
愛する人の子ども・・・どんな女性も、夢見ないことはないだろう。
それにしても、ベビードレスは高かった。
今から買おうとしている、ミンチョルの服の2枚分はあった。
「・・・子ども服って、高いのね・・。」
「そのときには、私が買ってあげる。
 ええっ? それとも、もうできちゃった?」
「違うわよ、まだよ・・・。」
ふたりは、笑いながら腕を組んで、次のコーナーへ行った。
それでも、ヨンスの目はいつまでも、ベビー服から離れることがなかった。

その頃から、ヨンスは暇さえあると、子ども服を見て歩いた。
そして、それを見本に、ベビー服を作り始めた。
自分の着なくなった服を解いて、手始めにエプロンを作った。
それは、可愛いエプロンに仕上がった。
それからは、セーターを解いては靴下を編み、ケープを編んだ。
ある日、ミンチョルの帰りがいつもより早かった。
それにも気づかずに、部屋で編み物をしていたヨンスを見たミンチョルは、はっと息を呑むようだった。
そこにいるのは、確かにヨンスであるのに、その姿が実の母の姿にそっくりだったのだ。
あれは、まだ、ミンジが赤ちゃんだったころのことだ。
そのミンジの靴下と自分のセーターを編んでくれた。
「母さん・・ただいま。」「ミンチョル、おかえり。外は寒かったでしょう?ここへ、いらっしゃい。」
母は、編み物の手を休めると、僕の手を取り、温めてくれた・・・。
「なにを編んでいるの?」「あなたのセーターと、ミンジの靴下よ。もうすぐ、出来上がるわ。」
母のぬくもりと、甘い香りに包まれたあの日のようだ・・・。

ドアの取っ手を持ったまま、フラッシュバックする脳裏の中、ヨンスにかける言葉も忘れ、呆然と立ち尽くしていた。
あの頃から、母は入院することが多くなった。
そして、帰らぬ人となっていったのだ・・・・。
もしも、ヨンスがそうなったら、僕は・・・。
「・・・ただいま・・。」
ミンチョルの言葉に、はっとしてあたりを見ると、もうすっかり、日が暮れていた。
「お帰りなさい。気づかなかったわ・・・。ごめんなさい。」
あわてて編み物を片付けると、ミンチョルの着替えを手伝った。
「なにを、編んでたの?」
さりげなく聞いた。
「赤ちゃんの靴下よ・・・見て、かわいいでしょう?」
ミンチョルにはつらかった。子どもが生めないヨンスのことを思うと、それに、幸せそうに編み物をしていた母が、それ以来帰らぬ人になったことを思うと・・・。
一瞬、ヨンスを見ただけで、そのまま、部屋を出て行った。
「すぐに、夕飯の支度をしますね・・。」
「いい・・・出る用があるから・・。」
ミンチョルはそういい残すと、出て行った。
行くあてなどないが、ヨンスを見ていると、余計につらくなり、彼女につらく当たるのではないかと思ったからだ。

ヨンスの作る子ども服は、少しずつ増えて、可愛い箱に収められた。
作るものも、少しずつ難しくなっていき、今回は総レースの真っ白いベビードレスを作った。
やっと、完成したドレスを、どうしてもミンチョルに見てもらいたかった。
ミンチョルが帰ってくるなり、綺麗に仕上がったベビードレスを見せた。
「可愛いでしょう・・・?
 今回は、すごく難しかったのよ。
 レースを縫うのは、たいへんなのよ。 
 このサテンのリボンは、ミンジがプレゼントしてくれたクリスマスの時のなのよ。」
顔中笑みをたたえて話すヨンスは、本当に幸せうだ。
「はやく、赤ちゃんがほしいわ・・・あなたも、そうでしょう?」
「・・・・・。」
「病気が治って一年以上もたつのに、どうしてできないのかしら・・・?」
「ヨンス、聞いてくれ・・・。」
ヨンスの肩をもち、ベッドの端に腰掛けた。
「ぼくは、子どもはいらない・・・。
 前にも言ったと思うが、二人の生活を壊したくない。
 このままで、いい・・・。」
ミンチョルの目が怖かった。
「・・・なぜ・・・?
 私は、ほしいわ・・・。どうして・・?」
ヨンスには、ミンチョルの言葉がなぜなのか、よく理解できずにいた。
「天使の家で見たシモンを、あなたも可愛いって言ったじゃない?
 赤ちゃんがいたら、どんなに幸せか・・・。
 ね、どうしてだめなの?
 私は、あなたの子どもがほしいわ・・。」
「・・・・僕は、子どもは嫌いなんだよ!
 それに、こんな貧乏な中で生まれてくる子は、幸せになれるはずがない。
 これ以上、貧しい暮らしはしたくない。 
 子どもなんて、お金のかかる厄介なものだ・・・!
 もう、僕の前では、子どもの話はしないでくれ。
 わかったね・・・?」
そんな・・・
ヨンスは、こみ上げる涙を抑え、思わず、部屋から飛び出していた。
リビングにいたミンジは、何事かとヨンスを見た。
「どうしたの?」
ヨンスは、家を飛び出してしまった。
・・・・あの人がそんなこというはずがない。
     あの人も、子どもがすきなのよ・・・今日は、機嫌が悪かったのよ。・・・

ミンジは、ドアのあいたままの寝室をのぞいた。
そこには、ベッドに腰掛けて、頭を抱えている兄・ミンチョルの姿があった。
「お兄さん、どうしたの?
 お姉さん泣いていたわよ。喧嘩したの・・・?」
ミンチョルの手には、ヨンスが一生懸命に作っていたベビードレスが握り締められていた。
そして、兄も涙で頬をぬらしていた。
「お兄さん、なにがあったの?」
ただごとではない様子を察して、ミンジは兄の前に座った。
「これね、お姉さんが作ったの。まだ、他にもいっぱいあるのよ。
 いつ生まれてきてもいいように、少しずつ準備しているのね・・・。
 うちには、こんな準備をしてくれる母親がいないから、今のうちにしているのね・・・。
 子ども服って、高くて買えないってわかっているから、デパートに行くたびに、作り方を研究して
 縫い方とか、フリンジのつけ方とかじっくり見て、家に帰ると、広用紙に自己流で型紙作って、
 自分の服を解いて、それで赤ちゃんの服を作っていたのよ。
 お姉さんらしいわよね・・・。」
ミンチョルは、ベビー服を両手で握り締めると、震えるように泣いた。
「・・・それでも、貧乏な中に生まれてくる子どもは、不幸になるよ。」
「貧乏な中に生まれる子どもにとって、両親揃っていれば、それだけで幸せだわ。
 お姉さんには、それが一番わかっているはずよ。
 お兄さんも、お姉さんの夢を知っていて、どうして、そんな冷たいことが言えるの・・・?」
「・・・・ミンジ、お願いだよ。もう、言わないでくれ・・・。
 子どもの話は、しないでくれ・・・。
 つらいんだよ・・・。」
ミンチョルは、泣きはらした目でミンジを見た。
「・・・ヨンスは、こどもが生めないんだよ・・。」
「えっ?  どうして。
 病気は、治ったじゃない、なのに・・・。」
「今、妊娠しても、彼女の体が持たないだろうと、医者に言われた・・・。
 命取りになるそうだ・・・・。
 つらいんだよ。
 ヨンスが、また、生命の危機にさらされるかと思うと・・・。怖いんだよ。」
「・・・どうして・・。そんな・・」
「僕も子どもがほしいよ。
 ヨンスに良く似た子どもを、何人も・・・。
 だけど、ヨンスを苦しめると思うと、耐えられない・・・。」
「・・・お姉さんは、知らないの?・・」
「   ああ・・・」
「お姉さんが、かわいそう・・・お姉さんが・・。」
「この前、一緒に、天使の家を訪ねたときに、ヨンスの出生を聞いたよ。
 ヨンスの母親もまた、ヨンスを生むときに亡くなったそうだ。
 病気で生んではいけないといわれていたのに、愛する人の子どもを身ごもって、
 こっそり生んで、亡くなったそうだ・・・。
 ヨンスが、母親のようになるとは限らないが、そうなったら、僕はどうしたらいいのか・・・。」
ミンチョルは、外を見た。
「ヨンス・・・!」
ヨンスは、コートも持たずに出たのだ。
「探してくるよ・・・。ミンジ、このことは、ヨンスには言わないでほしい。
 ヨンスは、自分の体のせいで、こどもが生めないと思うと、ショックをうけると思うんだよ。」
「ええ・・・わかった・・。」
ミンジは、この二人の美しく深い愛を感じて、涙がとめどもなくあふれてきた。
自分の服をほどいて、こどものためにベビー服をこしらえ、愛する人の子供を夢見ている姉・・・
姉の体を気遣い、姉の気持ちを思って、子どもが嫌いだという兄・・・
どうしてあげることもできずに、ミンジは綺麗に仕上がったレースのベビードレスを見つめていた。

ヨンスは、すぐ近くの公園のベンチに腰掛けていた。
ここで、思いきり泣いて、涙が乾いたときに、何もなかったように帰ろうと思うのに、
どうして、こうも次々に涙があふれるのだろう・・・。
「・・・ヨンス・・・。」
ミンチョルのやさしい腕は、ヨンスの顔を抱きしめた。
「ごめんよ、ごめん・・・・。
 ヨンス・・・いつも、傷つけてばかりで・・・。」
ヨンスの体は、すっかり冷えきっていた。
「・・・少しだけ泣いたら、帰ろうと思っていたのよ。
 ごめんなさいね・・・。」
ヨンスは、涙を拭いながら笑おうとした。
「私は、平気よ・・・心配したでしょう?
 あなたの言葉に、私が傷ついたんじゃないかって、気にしていたでしょう?
 大丈夫よ。
 少し、ショックだったけど、あなたの言うとおりにします・・・。
 あなたが、それを望むのなら、私もそうします・・・。」
無理して笑おうとするが、やはり、涙があふれてきた。
もう、それ以上の言葉が出てこない・・・。
ミンチョルは、そんなヨンスの姿が可哀想過ぎて、どうしようもなく、強く抱きしめた。
「・・・帰ろう。」
あわてて持ってきたヨンスのコートを肩に掛けてあげながら、ヨンスを抱きかかえた。
「病気にかかったときに、とうにあきらめていたことなのに、
 シモンを抱いたときに、私にも子どもが持てるんじゃないのかしら、と思ってしまって・・。
 あなたの思いも気づかないで・・・。」
ふたりは、ゆっくり歩いた。
「私は、いつもあなたのそばにいるだけで、幸せなのですから、
 もう、子どもの話はしません。
 だから・・・私に冷たくしないで・・。
 私は、あなたから冷たくされると、つらくて悲しくて、だから・・。」
ミンチョルは、冷たくなったヨンスの肩を抱きしめながら歩いた。
「・・・うん・・。解ってるよ。」
つらかった。つらくて悲しくてたまらなかった。
この世に神などいないというのか・・。
どうして、これほどに一途な思いでいるヨンスを苦しめるのか・・・。
もし、神がいるというのなら、どうか、ヨンスの健康を取り戻し、ふたりの間に可愛い子どもを授けてほしい・・・。

子どもに関わるすべての物を箱につめ、押入れの奥深くに片付けた。
・・・さようなら、ごめんなさいね・・・。
そのかわりに、画材道具を引っ張り出した。
また、絵の勉強をしようと決めていた。
今のままの経済状況では、復学は無理だが、どうにか、アトリエで仕事ができないかと考えていた。
せめて、ミンジがアルバイトをしないですむように、絵の勉強に集中できるように、助けてあげたかった。
しかし、つい描いてしまう絵は、子どもの小さな手のひらだったり、シモンの笑い顔だったりする。
・・・もう、シモンは、大きくなったかしら?
      そろそろ、4ヶ月になるわ。 暖かくなったら、会いにいきたいわ・・・。
いけない、また、あの人の嫌うことをしている。
その絵をファイルの中にしまうと、外の風景を見た。
樹木を描こう・・・。
冬の木立を描いているうちに、ベビーカーを押す主婦が通りかかり、その中の赤ちゃんが気になりだした。
どんな顔をしているかしら?
男の子かしら・・・女の子かも・・。
名前は、なんていうのかしら・・・。
私とあの人の子どもには、どんな名前をつけるかしら・・・。
木立の並木道を歩いている母親とベビーカーの赤ちゃんを描いていた。
母親の横には、そう、ミンチョル・・・ふたりは、幸せそうに子どもの顔を覗いている。
目を閉じて、その風景を想像すると、また、頬を涙が流れる。
なぜ、神様は、人間に夢を見ることができるように作られたのかしら・・・。
いっそのこと、夢なんか見ない生き物だったら、よかったのに・・・。
そうすれば、こんなに苦しまなくてよかったのに・・・。

それから、数日後のことだった。
「天使の家」の理事長であるハン・キョル先生から電話をもらった。
「ハン先生・・! お元気ですか?」
「ええ・・・私は元気にしていますよ・・。
 今日は、悲しいお知らせがあって・・。
 ご主人のミンチョルさんは、いらっしゃいますか?」
「いいえ、仕事でいませんが・・・なにか?」
「先週、うちに来られたのです。」
「まぁ・・天使の家に?」
「ええ。用事は、子どもを養子縁組できないかということでした。
 シモンを抱いて、どうしてもこの子を、ヨンスとご自分の子どもにできないかといわれたのよ。
 私も、それができたらと、その後、養子の手続きを進めました。
 それが上手くいくようでしたので、今度、ヨンスと一緒にたずねてきてほしいというご返事を
 しようと思っていた矢先に、シモンが・・・息をひきとったのです・・・。」
ヨンスは、突然の訃報に受話器を落としそうになった。
「突然のことでした・・・。
 解剖をすることは、シモンにあまりむごいと思いまして、それはしなかったのですが、
 心臓に欠陥があったのではないかと、医師は判断しました。
 産後に行った検査の時に、心臓に雑音が見られ、その後、虐待事件などで精密検査を行っていなかったので、
 気づくのがおくれたんでしょうね・・・。
 可哀そうなことをしました・・・。
 せっかく、ミンチョルさんが、あなたのために計画されたことだったのに、
 本当に残念です・・・・。」
ヨンスの泣き声が、低く聞こえた。
「ヨンス、突然にこんなお話をして、さぞ、驚いたでしょうね・・・。
 ご主人には、私のほうからお話しますね・・・。
 どうか、シモンの冥福を祈ってあげてくださいね・・。
 ほんの5ヶ月の命でしたが、まわりの保育士たちには、たくさんの微笑と幸せを分けてくれた天使でしたよ。
 そして、あなたを、母親にしてあげたい、と望まれたご主人に感謝してくださいね。」
電話を切った後も、ヨンスはその場に泣き崩れていた。
シモン・・・ほんの5ヶ月のはかない命だったが、ヨンスとミンチョルに、大きな希望を残してくれた子だったと思う。
あの子のぬくもりは、いつまでも、ふたりの腕に残っていた。

                                6話につづきます。
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댓글 '2'

hoshigaki

2005.01.02 03:16:52

maria chrisさま
あけましておめでとうございます、
今年もどうぞよろしくお願い致します。

nalys

2005.01.02 21:15:41

maria chris様, あけましておめでとうございます.
「美しき日々」のドラマよりつながる創作文をこのように書くことができるなんてすごいです.
ご立派な能力ですね.
羨ましいです.
新年にも良いことだけ一杯になるように願います.
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