nalysさまより...
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       創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」⑪

ヨンスを布団に横にすると、しばらくミンチョルも横になった。
あのときのように、初めてふたりでここに泊まり、なにもできずに、ただ手を繋いで寝ていたときのように、ふたりは手を繋いで寝た。
ヨンスが、静かな寝息をたてると、ミンチョルはそっと布団からでると、外に出て、石段に腰掛けて、静かに泣いた。
ヨンスも子どもも、助けてあげたい・・・。

そのときに、ミンチョルの携帯電話がなった。
相手は、ソンジェからだった。
国際音楽祭の受賞パーティーに姿がなく、妻の病気で帰ったとなると気になってしょうがなかったのだろう。
「ヨンス姉さんに何かあったの?」
心配そうに聞くソンジェの声に、つい、泣き出してしまい、声が出なかった。
「兄さん・・・!」
「・・・それが、妊娠したんだよ・・。」
「え? 姉さんは、産めない体だからと、言ってなかった?」
「・・・うかつだった・・・。
 どうにか、産めるようにはできないものだろうか?
 な、ソンジェ、医者に頼んでくれ。お願いだ、どうにか、産めるようにしてほしい・・・
 ソンジェ、助けてくれよ。お願いだ。ソンジェ・・・。」
ミンチョルの泣き声は、ただ事ではない様子だと思うと、今にもチェジュ島を飛び出したい気持ちだった。
「わかったよ。先輩に聞いてみるよ。どうにか、手立てはあるかもしれない。
 姉さんに、気を落とさないように伝えてください。」
「ありがとう、ありがとう、ソンジェ・・・。」
搾り出すように、お礼を言うと、強く閉じるひとみから、涙がぽたぽたと白砂に落ちた。
無理なことでも、どうにか手立てがあるのかも・・・と思うだけで、今のミンチョルは救われる思いがした。
それから、数分後、また電話がなった。
相手は、ケイングループの会長ケイン・クラウディオの秘書であり、執事である在米のチャン・ヒョヌクからだった。
国際音楽祭でミンチョルがプロデュースした新人歌手の受賞を祝っての電話だった。
「会長も、非常にお喜びの様子ですよ。
 これを機に、どんどん大物を育てていってください。」
いつもの明るさがない様子に気がついたのか、チャン・ヒョヌク秘書は目ざとく追及した。
「なにか、あったのですか?」
「・・・・はい・・・それが・・妻が妊娠しまして・・。」
チャン秘書にも、妻のヨンスの病状は詳しくしらせていた。
「・・・こちらで、病院を手配しましょう。
 奥様が、安全にお産できるように、医師をさがしましょう。
 どうか、ミンチョル社長は、ヨンス奥様を安心させて、ゆっくり休ませてください。
 大至急、お調べいたしますから、はやまったことはお考えにならないでください。
 いいですね。私が連絡するまでは、病院へは行かないでくださいね。」
まるで、神の声を聞いたようだった。
ヨンスの夢であった暖かい家庭が、今、手に届きそうなところにあるような、そんな気がした。
ミンチョルは急いで部屋に入ると、布団に寝ているヨンスを見た。
枕を涙でぬらしている横顔が、とても不憫でならなかった。
時々、泣きじゃくるヨンスの顔を、そっと触った。
君は、きっと、母親になれるよ・・・きっと。
誰よりも美しく、やさしい母親に・・・。君のあこがれだった、暖かい家庭を作ろう。
いつのまに眠ったのか、朝の日差しが目に突き刺すようにまぶしく目を覚ました。
すっかり眠っていて、肩まで布団がかけられていて、横にいたはずのヨンスがいなかった。
「ヨンス!」
急いでおきて外に出た。
「ヨンス・・!」
周りを見るが、ヨンスの姿がどこにもない。
「ヨンス!!」
裸足で飛び出した。
「おはよう・・・」
ヨンスの声がするほうをみると、離れになっている台所で朝ごはんを作っているようだった。
「チェジュ島に戻るんでしょう? 早く食べてでかけないと・・。」
何事もなかったかのようなヨンスの姿に、ミンチョルは安心しながらも、少し無理をして笑っているような気がして、目をあわせるのがつらかった。
小さなテーブルを挟んで、朝ごはんを食べた。
「今日、病院に行きます・・・。
 もう、あなたを苦しめることはしませんから・・・。」
泣きすぎた目は、いつでも涙があふれそうでこらえきれないようで、ミンチョルの顔をまともに見ることもできなかった。
「ソンジェが、医者にどうにか産めないか、聞いてみるというんだよ。
 それに、アメリカのチャン秘書も、詳しく調べて電話をしてくれるというから、それまで待ってみよう。
 どうにか、生む方向で考えていこう・・。」
「産んでもいいんですか?
 私、赤ちゃんが産めるの?」
今にも涙がこぼれそうなひとみで、ミンチョルを見つめた。
「君も、おなかの子供も、生きていてほしい・・・。
 ずっと、待ち続けていた二人のこどもなのだから、大事に育てていこう・・・。」
ヨンスが一番聞きたかった言葉だった。
次々に流れる涙は、喜びの涙であった。
「病院代もかかるかもしれないから、私、アトリエの仕事をもう少し増やしてもらうわ。
 子供の洋服も、私は全部自分で作るから、大丈夫よ。
 全部私が準備するから・・・
 あなたには、迷惑をかけないようにするわね・・・。」
「君は、まだそんなことを気にしていたのか・・・?」
ミンチョルはつらかった。
ベビー服を作るために、ヨンスは自分の服を切ってそれで作っている姿を思い出し、わずかな給料でのやりくりでは、子育ては大変だとアトリエに勤めだし、それを少しずつ貯蓄しているヨンスを思った。
そんなヨンスを死なせたくなかった。だから、子どもは要らないと思っていた。
今でも、妊娠が間違いであって、また、元のように二人の生活に戻ることができたらと、ミンチョルは思っている。
そのときに、アメリカのチャン秘書から電話がかかった。
「ケイン会長は、奥様のお体を一番に心配されておられます。
 妊娠に耐えられないようであれば、あきらめたほうがいいのではないかと・・・。
 とりあえず、明日にでもこちらから、著名な産婦人科医師を連れてソウルに行きますので、
 そのときに話し合いましょう。
 病院の名前は、聖ルチア病院といいまして、ソウル郊外にあります。
 そちらに入院の準備をいたします。
 そこで、医師の判断にすべてをゆだねましょう。」
ミンチョルは肩の力が抜けるようだった。
明日に決まるのだ。
ヨンスの運命は・・・それは、ミンチョルの運命でもあるのだ。
朝ごはんがすむと、ふたりは浜辺を少し歩いた。
あの時と同じように・・・。
「寒くない?」
「ええ、大丈夫よ。
 子どもの名前は、なにがいいかしら・・。
 男の子かしら・・・それとも、女の子かしら・・・?
 きっと、6月だわ、お誕生日・・・。
 誕生石は、パールね。真珠のように、きれいな名前がいいわね・・・。
 あなたが決めて・・。」
うれしそうに話すヨンスは、ミンチョルの顔を見て、はっとした。
ミンチョルは泣いていた。
「君は、怖くない?
 ぼくは怖くてたまらない。君が、また、死の恐怖にさらされるかと思うと・・・。
 僕のそばから、離れていくようで・・・怖いんだよ。」
ミンチョルは、ヨンスを抱きしめた。
本当に怖いのだろう・・・ミンチョルの体は震えていた。
寒さのせいではなく、ヨンスが離れていってしまうような恐怖感に震えていたのだ。
「僕の母さんも、ミンジを産んでしばらくして亡くなった。
 君のお母さんも、君を生んですぐに亡くなった・・・・。
 怖いんだよ・・・君までもそうなったら・・・。」
「・・・いつも、あなたを苦しめてばかりいるわね・・・。
 私、死なないわ・・・あなたをおいて、私はどこにも行かないわ・・・。
 私は、あなたがいないと生きていけないもの。
 あなたも、私がいないと生きていけないでしょう?
 だから、私は死なないわ・・・。
 泣かないで・・・。」
ヨンスは、ミンチョルの涙を拭いてあげた。
「君の泣き虫がうつってしまったよ・・・。」
「帰りましょう、うちへ」
ヨンスは、ミンチョルの前で子どもの話はしないようにしようと思った。
これ以上、彼を悲しませないようにしようと・・・。
自分の命に限りがあるのなら、なおのこと、彼に悲しい思いをさせたくないと思った。
いつも、笑っていられるように、これからは務めて悲しむことはしない、と心に誓った。

翌日、聖ルチア病院へ行った。
ソウルから、1時間以上も離れたスオンに病院はあった。
クリスチャン系の病院で、主に婦人科と小児科を実施している綺麗な病院で、看護婦のほとんどは修道女であった。
アメリカから、チャン秘書と産科のアーサー医師がすでに着いて待っていた。
「早速、奥様の精密検査をしていきたいと思います。
 これまでの病状は、前にかかっておられた病院からカルテと診療記録を送ってもらいましたので、
 大体のところはわかりました。
 3日ほどで、このことについての結果はでますので、そのときに判断しましょう。
 しばらくは、入院してもらいますので、そのおつもりで・・・。
 また、お産が決まりましたときにも、こちらのほうが設備がよろしいので、そのときもこちらで入院していただきます。」
いささかの不安があった。
いままでは、いつでも会える距離にいたのだが、今度は少し離れる。
それでも、子どものためなのだ。
「どうか、よろしくお願いします。」
ミンチョルは、深く丁寧に頭を下げると、ヨンスを病室に寝かしてソウルに帰る。
「また、明日来るからね・・。」
「いいわ・・・遠いから、毎日来なくても、いいですよ。」
「うん・・・・遠いけど、それでも来るよ。」
ヨンスを強く抱きしめた。
「さびしくなったら、電話して。」
いつまでも、離したくなかった・・・ヨンスの細い体から、離れたくなかった。
産みたい・・・という自分のわがままで、この人をさびしくさせてしまっている。
離れたくないという彼の言葉とは裏腹に、今、また、離れてしまう・・・。
「・・・あなた、ごめんなさいね・・・。」

これからの二人は、今までになく、重い苦しみを背負うことになっていくのだろうが、
ヨンスもミンチョルも、その苦しみに耐えるだけの力をそなえているはずだった。
今は、その試練に立ち向かうまでの助走にすぎないのだ。
 
             (12話に続きます)

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댓글 '6'

코스

2005.03.30 00:42:36

「美しき日々
最後の放送が近付きながら...
研修の愛があまりにも切なく感じられて大変泣いたんです.
今もどんなザングソエソでも「美しき日々の音楽をドルウルテなら胸の中に鳴らして来る熱さが前海進んです.
maria chris様.様の文を読みながらその場面たちの中の研修があまりにも見たくなります.

maria chris

2005.03.30 18:44:54

코스 さま、早速レスくださって、ありがとうございます。
私の中での「美しき日々」は、ジウさまの切ない演技のなかで、最高のドラマだと思います。
ここまで、観るものの心を揺り動かすジウさまの演技は、本当にすごいという言葉以外にないくらいです。
そんな美しいドラマの続編とは、恐れ多いことですが、
코스 さまに読んでいただけるなんて、感動です。
悲しくて申し訳ないです。
これからも、お読みくださいね。

健康には、十分に気をつけてくださいね・・・。


しょうこママ

2005.03.30 19:42:18

本当に今週で終わってしまうんですね。私の大好きな「美しき日々」これからどうすればいいのかしらなんて思ってしまいます。でも、この二人にはほんとに温かく見守ってくれる頼もしい仲間たちがいるんですね。きっときっとその思いはつうじますよね。

TiYan

2005.03.30 20:59:51

maria chris様 今日は 有り難うございます。
待っていました。
読んでいるうちに 行間の間にミンチヨル(イ・ビヨンホン氏)ヨンス(チエ・ジウ姫)の姿が 走馬燈の様に私の なかを駆けめぐりテレビの続きを 見ているようです。私のなかで 一番好きなドラマで 何度 見返しても あきることがなくヨンスの望む様に 暖かい家庭を・・・ ミンチヨルに愛されて幸福に 成って貰いたいですが mariaさんの考えも 有ると思いますので読み手の勝手な言い分と思って下さい。「美しき日々」「創作文~それから」 大好きな1人に 免じてお許し下さいね。次回も 楽しみに 待っています。 乱文にて失礼します

miharu

2005.03.30 22:37:57

こんにちは、またまた、美しい音楽と共に11話ありがとうございます。毎日、サイトを見ながら心待ちにしておりました。今回も、切ない二人の情景が目に浮かびました。でも、少しだけ希望が持てるようで・・・・何時も相手の事を思いやりすぎて苦しんでしまう二人ですが、さまざまな試練を乗り越えて幸せになっていくんですね。次回も楽しみにしています!

zahocexi

2010.03.21 19:34:38

YiUFBI <a href="http://xghwqjouzdun.com/">xghwqjouzdun</a>, [url=http://pgsywrhxgxpe.com/]pgsywrhxgxpe[/url], [link=http://iyowmvrsaaav.com/]iyowmvrsaaav[/link], http://eubvldqyidzh.com/
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