創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」18

嬉しくて、眠れない朝を迎えた。
愛する人の横で、目が覚める幸せなひと時・・・
その思いは、ヨンスもミンチョルも同じだった。
薄明かりの中、起き上がろうとするヨンスを、ミンチョルはとめた。
「朝ごはん、つくらないと・・・。」
「ミンジがやってくれることになっている・・・。」
「お洗濯もしなくちゃ・・・。」
「僕がするから・・・。」
「私もなにかしたいわ・・・・
 いままで、なにもできなかったんだから・・・・。」
「うん・・・・じゃ、僕の絵を描いて・・・。
 僕と子供の絵を・・・帰ってくるまでに、書きあげておくこと。
 いい・・?」
ヨンスは、ためらいながらも、優しく笑って頷いた。
ミンジが準備してくれた朝食を、一緒にたべた。
ヨンスは、夫が出勤するのを、下の駐車場まで見送りに出た。
ふたりで手をつないで歩けるひと時である。
「無理しないで、寝ているんだよ。」
「ええ・・・」
「何かあったら、電話するんだよ。」
「ええ・・・・」
「たくさん食べられなくても、くだものは食べるんだよ。
 それに、薬を飲み忘れないように・・・。」
「ええ・・・・子供じゃないんだから。
 案外、心配性なんですね・・・。」
「病院だと、医者も看護士もいてくれたけど、家にいると思うと、なんだか心配になるよ。」
「大丈夫です。ミンジもいてくれるんですから・・・。
 あなたも、しっかり仕事してくださいね。」
「途中抜け出せるようなら、帰ってくるから。」
「まぁ・・・。」
ヨンスは、満面の笑顔でミンチョルを見た。

ミンチョルが出勤すると、ヨンスはミンジがする家事を少し手伝ってから、久しぶりにキャンバスに向かった。
ミンチョルに、赤ちゃんを描いた絵を破かれたことがあった。
あのときから、絵はもう描かないと決めていた。
私のわがままで、あの人を怒らせてしまったのだ。仕方ないことだと思いながらも、絵を描きたいという衝動は常に感じていた。
「筆が進まないようね。」
洗濯物を干し終えたミンジが、部屋に入ってきた。
真っ白いキャンバスの前で、じっとしているヨンスの手をそっと握った。
「お兄さんに聞いたわ。
 一度、お姉さんが描いた絵を破り捨てたそうね。
 お姉さんが、赤ちゃんがほしくてたまらなかった頃・・・・。
 赤ちゃんの絵を夢中で描いているお姉さんをみて、つらかったって。
 赤ちゃんが産めない体だと知っていたから、余計につらかったでしょうね・・・。
 お姉さんのことが、かわいそうで、どうしようもなかったんだわ。
 私も、お姉さんの体のことを聞いてからは、とても心が痛んだわ・・・。
 お姉さんが妊娠したと聞いたときも、パリのアパートでずっと泣いていた・・・。
 二人がかわいそうで・・・。
 お兄さんに電話しても、明るい声なのに、とてもさびしそうでかわいそうだった・・・・。
 二人が別々に住んでいたときも、なるべく電話してあげようと思うのに、
 お兄さんがつらい気持ちでいると思うと、電話もかけられなかった。
 もしも、お姉さんが、赤ちゃんを産んで、死んでしまったら・・・」
ミンジは、口を押さえて泣くのをこらえた。
「ごめんなさい・・・。」
ヨンスは、ミンジの肩をそっと抱いた。
「ミンジ、心配かけてごめんなさいね・・・・。
 ほんとうに、私の命が赤ちゃんを産むことで終わってしまうようなときは、どうか、お兄さんのことをお願いするわ。
 あの人を、束縛するつもりはないのよ。
 私が死んでしまったら、私から離してあげたいの。
 きっと、しばらくはつらい毎日を送ることになるかもしれないけど、
 それを乗り超えたときは、新しく愛する人ができるわ・・・。
 その人に、お兄さんをお願いしてほしいの。
 私にしてあげられなかったことを、どうか、その女性にお願いしてほしいの。
 赤ちゃんは、天使の家に預けてほしいの。
 もしも、生まれてくる子が私に似ていたら、余計に思い出すことになるでしょう?
 赤ちゃんの衣類は、少し作っているのよ。
 私の洋服を解いて作ったものばかりだけど、なかなか可愛いのよ。
 それを、荷物に作っておくから、それを持たせてくれたらいいわ。
 あとは、セナとナレに頼んでいるの。時々、面会にいってほしいって・・・・。」
ヨンスは、不思議と涙はでなかった。しかし、ミンジはヨンスの肩に顔を伏せて泣いていた。
「お姉さん・・・死ぬことなんか考えないで、生きていくことを考えてよ。
 赤ちゃんのママは、お姉さんしかいないわ。
 それに、お兄さんが愛する人の子どもを簡単に手放すことしないわ。
 わたしだって・・・。」
「あの人は、私が赤ちゃんを産むことを、あまり喜んでいないの・・・・。
 私の苦しむ姿を、ずっとみてきていたから、しかたないことでしょうね・・・。
 お兄さんの気持ちが十分にわかるから、わたしもつらいの・・・。
 ミンジ、わかって・・・・私の気持ち・・・。」
ミンジはなきながら、首を振った。
「いやよ。
 お姉さんが死ぬなんて、私はいや。
 赤ちゃんもお姉さんも生きていてほしいの。」
「ええ・・・そうね。
 わたしもね、なんだかそんな気がするのよ。
 孤児院で育った私が、ミンチョルさんと出会い、病気を克服できたんだもの。
 それに、できないといわれていた赤ちゃんができたんだもの。
 私も赤ちゃんも、きっと、生きているような気がするのよ。
 これまでも、いろんな危機を乗り越えてきたんだもの。
 今度も大丈夫なような気がするわ・・・・。」
ミンジは涙を拭きながら、ヨンスを見た。
「そうよね。きっと、大丈夫よね?
 私もそう思うの。
 そうじゃなければ、この世に神さまなんていないわ。
 私は、信じるわ。
 お姉さんが赤ちゃんを抱いている姿、早くみたいな・・・。」
泣き顔に少し笑みがこぼれた。
「絵を、描こうかしら・・・・?」
ヨンスは、少し大きくなったおなかをそっと触った。
「どんな子かしら・・・・。
 パパに似ているかしら・・・・
 男の子だったら、名前はなにがいいかしら・・・。」
そっと、目を閉じた。涙があふれそうだ・・・・。
まぶたの奥に写るのは、やさしいミンチョルの顔だ。
幸せにしてあげたくて、結婚したのに、不幸にしてしまった。
あの人も、この子も・・・・。
生きている間だけでも、幸せな思いをさせてあげなければ・・・・泣かないでいることが、今の私にできることだから、泣かないようにしよう。
ヨンスは、絵を書き出した。
半年ぶりくらいだろうか・・・・久しぶりに、用紙に鉛筆をはしらせた。
みなくても、いつでも描ける。
あごのラインも、眉の位置も、耳の形も、唇の柔らかさも、全部描ける。
今までにも何回も描いてきた愛する人の顔・・・・・。
ヨンスの絵は、なんともいえない美しさがあった。
命を吹き込まれたかのような絵たちは、見る人々に感動と安らぎをあたえた。















댓글 '9'

kimiyo

2005.07.19 08:30:52

とても素敵なミンチョルとヨンスの物語をいつも読ませてくれて有難うございます。お二人が目の前に浮かんで涙が止まりません。私の中でミンチョルとヨンスは、特別です。これからも素敵な物語を読ませてくださいね。

kazuko tanaka

2005.07.19 22:41:52

とても感動しました。
私の体の中を二人の熱い愛がとおりすぎていきました。
命の尊さを叫び、愛の強さで、一生懸命生きていこうとするヨンス、、、
本当にすばらしい物語をありがとうございます。
つらいと思う日々を吹き飛ばしてくれる勇気をあたえられました。これからも
すばらしいスト-リ-期待します。
                       kazujiu

Maa koike

2005.07.20 00:35:47

maria chrisさま
いつも素敵な音楽と”それから”ありがとうございます。
ヨンスの強さ見習いたいです。涙があふれます。
また期待しております。

TOKYO

2005.07.20 01:17:34

maria chrisさま 、はじめまして。
こちらにお邪魔して、まだ間もないTOKYOと申します。
どうぞ、よろしくお願い致します。
私事ですが、今日はなんだか問題ばかり多い、疲れる一日でしたが、
愛するヨンスの姿を読ませて頂いて、ふっと胸のしこりが消えていくようです。
ミンチョルの心配、ミンジの心配・・・、まったく映像が見えるようですね。
特にこのミンジの言葉、
>私も、お姉さんの体のことを聞いてからは、とても心が痛んだわ・・・。
 お姉さんが妊娠したと聞いたときも、パリのアパートでずっと泣いていた・・・。
 二人がかわいそうで・・・。

ここで、じわっと熱い涙が溢れてしまいました。
その通り、本当にかわいそうなヨンスとミンチョルです。
でも、これほど愛せる相手がいる二人は、誰よりも幸福でもありますね。
お身体を大切にして、この夏をお過ごしください。
この後、どんな試練や更なる愛の姿を拝見できるのか、楽しみにしております。

hiro

2005.07.20 07:06:19

なみだが溢れてとまりませんでした。
すてきな二人です。もちろん、ミンジもミンチョル夫婦 想いで-
たのしみにしています。

miharu

2005.07.20 20:40:07

こんなに早く18話を読ませていただけるとは思っていませんでした。
大変感激しております。

今回は、自宅へ戻って出産までのひと時ですね。
不安な中にも喜びいっぱいの子供の誕生、
しかし、二人にとっては大きな不安を抱えているがゆえに、
こうして、のんびりとすごせる時間が多く必要なのでしょう・・・・
愛する人と、暖かい家族に囲まれて過ごす日々を、
もう少し与えてあげてください・・・・


meronn

2005.07.22 18:26:36

maria chris様、素敵な物語に、心静かな音楽。又スクロールする映像の何と素晴らしい事!涙ぐみながらミンチョルの優しさとヨンスの思いやりの心が美しい二人だと、しみじみそう思いました。これからもどうか幸せな日々を遅れますようにお願いします。有り難うございます。

TiYan

2005.07.24 18:18:06

早々の18話有り難うございます。
仕事で 2回もミスをしてしまい 大変落ち込んでいました・・・。
それも 同じようなミスを・・・  何て愚かな自分に 腹が立っていていたんです
なにもしたくない状況でしばらくぶりにお邪魔したところ
maria 様の「美しき日々~それから」を読ませて頂いて ヨンスの何事にも 前向きな姿勢に感動しています。
私もヨンスに 負けないで 落ち込んでは いられないと感じ入って明日から
失敗の無いようにガンバロウと決心したところです。
ヨンスの生き方は、いつも 前向きで 感心させられます・・・。
どうか ガンバりやのよんすに 素晴らしい 未来が待っていますように
お願いします。ミンチヨル・ミンジ・ナレ・お父さんの為にも
私も 力をもらいました  ありがとうございました。


maria chris

2005.07.25 23:15:37

いつも読んでくださるみなさまへ・・・
よんでくださって、心より感謝申し上げます。

退院できて、本当によかったです。
このまま、ふたりが離れ離れではかわいそうですよね・・・。
ヨンスは、一見弱そうに泣き虫に見れますが、実はミンチョルが弱くもろく傷つきやすいようです。
それを知っているから、ヨンスは彼を守ろうとします。
あるだけの生命力で・・・。
それは、彼がいてくれるおかげでしょうが、ミンチョルにとっても、
彼女がいてくれるおかげで、ここまで会社を発展させ、最高の人間になろうと努力を重ねるのでしょうね・・・。
これからも、努力家で前向きなふたりを、応援してください。

読んでくださって、本当にありがとうございます。
次回も、読んでくださいね・・・・。          maria chris
List of Articles
번호 제목 글쓴이 날짜 조회 수sort
8899 韓国テレビ番組出演情報~12/26に延期となりました~ [12] 코스(W.M) 2011-12-13 10158
8898 H.I.S.のスポンサー番組&ジウ姫番組^^ [7] neco 2011-10-24 10140
8897 創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」② [2] maria chris 2004-11-30 10094
8896 2004.10.28 ジウ姫&ビョンホンさん来日映像Ⅱ(ロングインタビュー)<VOD> [20] Jarno 2006-05-22 10009
8895 [締切]皆さまとのドラマ共同応援スタートです^^ [33] saya(staff) 2011-07-30 9944
8894 創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」⑬ [6] maria chris 2005-04-11 9929
8893 東日本巨大地震:チェ・ジウ・インタビュー file [3] 코스(W.M) 2011-03-16 9896
8892 創作文・「美しき日々・・~それから・・~Beautiful days」22 [10] maria chris 2005-09-27 9896
8891 ジウちゃんのうれしい来日!? [2] kyo3 2006-10-03 9856
8890 <b>STARJIWOOの&#25522;示板住所が&#22793;更されました.</b> 운영자 현주 2007-06-11 9843
8889 MV ジウ&#23019; *イ&#12539;ビョンホン [7] lovebeauty 2006-08-29 9816
8888 美しき日&#12293;ファイナルコンサ&#12540;ト打ち上げ&#20889;&#30495; [7] 2005-05-28 9732